歯科衛生士のぼらんです。
今回は「グラム陽性菌とグラム陰性菌」について、
- グラム陽性菌・グラム陰性菌の概要
- それぞれの特徴
- 違い
- グラム染色の原理
- グラム陽性菌の「抗酸菌」とは何か
などを説明します。
学習&振り返りにお役立てください。
グラム陽性菌・グラム陰性菌とは?
細菌は一部を除き、「グラム染色法」で染め分けできます。
グラム染色法は細菌の細胞壁の構造の違いを利用したもので、染色することで細菌の観察をしやすくします。
細菌はグラム染色によって、
グラム陽性菌 | 紫色 |
グラム陰性菌 | 赤色 |
というように、紫色と赤色の2色に染め分けられます。
グラム陽性菌の例
グラム陽性菌にはこのようなものがあります。
- 黄色ブドウ球菌
- 化膿レンサ球菌
- 肺炎球菌
- 口腔レンサ球菌
- 炭疽菌
- ジフテリア菌
- 破傷風菌
- ボツリヌス菌
グラム陰性菌の例
一方、グラム陰性菌にはこのようなものがあります。
- 淋菌
- 髄膜炎菌
- 緑膿菌
- 百日咳菌
- 大腸菌
- コレラ菌
- インフルエンザ菌
- 梅毒トレポネーマ
グラム陽性菌・グラム陰性菌の細胞壁の特徴
記事冒頭で、グラム陽性菌とグラム陰性菌は細胞壁の構造に違いがあると説明しました。
そこで、それぞれの細胞壁の特徴について見ていきましょう。
グラム陽性菌の細胞壁の特徴
グラム陽性菌の細胞壁の特徴は、
- ペプチドグリカンの層が厚い
- 外膜がない
です。
グラム陽性菌のペプチドグリカン層は厚いです。
グラム陽性菌の細胞壁には外膜がありません。
グラム陰性菌の細胞壁の特徴
一方、グラム陰性菌の細胞壁の特徴は、
- ペプチドグリカンの層が薄い
- 一番外側に「外膜」がある
- 外膜と細胞質の間に「ポーリン」がある
- 外膜と細胞膜(内膜)の間に「ペリプラズム」が存在する
です。
グラム陰性菌の細胞壁のペプチドグリカンは、グラム陽性菌のそれと比べて薄いです。
グラム陰性菌の細胞壁の一番外側にはリポ多糖(LPS)に覆われた「外膜」があります。
これはO抗原や内毒素の作用をもちます。
外膜と細胞質の間に、「ポーリン」というタンパク質の管があります。
これがあることで低分子物質が細胞内外を行き来できます。
外膜と細胞膜(外膜に対して内膜)の間に「ペリプラズム」という領域があり、さまざまな加水分解酵素が存在しています。
グラム陽性菌とグラム陰性菌の違い
ここで、グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いを見てみましょう。
グラム陽性菌 | グラム陰性菌 | |
---|---|---|
グラム染色 | 紫色 | 赤色 |
細胞壁(ペプチドグリカン層) | 厚い | 薄い |
外膜 | なし | あり |
決定的に違うのはこの3項目です。
ちなみに、
- セレウス菌
- 炭疽菌
- 破傷風菌
- ウェルシュ菌
- ボツリヌス菌
などの芽胞を形成する菌はすべてグラム陽性菌です。
グラム染色で細菌の色が分かれる原理
基本的なグラム染色法の流れを大まかに説明すると、
- 紫色で染色
- ルゴール液※で紫色を不溶化
- アルコールで脱色
- 赤色で染色
このようになります。
(※ルゴール液はヨウ素・ヨウ化カリウム液のことです。)
ではなぜ細菌の色が紫色と赤色に分かれるかというと、
細胞壁の厚い細菌では紫色を完全に脱色できないから
です。
これをもっと詳しく説明すると、
- 厚い細胞壁はアルコールで壊れない⇒紫色は脱色されない⇒赤色が入らない⇒「グラム陽性菌」
- 薄い細胞壁はアルコールで簡単に壊れる⇒紫色が脱色される⇒赤色が入る⇒「グラム陰性菌」
となります。
つまり、グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いは細胞壁の構造ですが、それによる「脱色されるかしないか」という違いが細菌の色を分けるということですね。
基本的なグラム染色に使われる染料は、
- クリスタルバイオレット or ゲンチアナバイオレット(紫色)
- サフラニン or フクシン(赤色)
で、脱色にはエタノールが使われます。
グラム染色法で染め分けられない「抗酸菌」
細菌の中には、グラム染色法で染め分けられない「抗酸菌」というものも存在します。
これは菌の名称ではなく「酸に抵抗性を示す菌の総称」で、
- 結核菌
- らい菌
などのマイコバクテリウム属の菌や放線菌の一部などがこれにあたります。
抗酸菌の細胞壁にはミコール酸というロウのような脂肪酸が含まれており、これがグラム染色の染料を弾くため染め出されません。
一方で、抗酸染色法のひとつ「チール・ネルゼン染色」では赤色に染め出されます。
抗酸染色法とは?
一般的な抗酸染色法「チール・ネルゼン染色」は、
- 赤色に染色
- 酸性アルコールで脱色
- 青色に染色
大まかにこのような流れで細菌を染め出す方法です。
最初に入れた赤色が酸性アルコールで脱色されなければ(つまり赤色に染め出されれば)、その細菌は酸に抵抗を示す「抗酸菌」ということになります。
反対に、脱色されて後の青色が入れば抗酸菌ではないということです。
ちなみに、抗酸菌は外膜がないことからグラム陽性菌として扱われます。
一般的な抗酸染色法(チール・ネルゼン染色)で使われる染料は、
- 石炭酸フクシン(赤色)
- メチレンブルー(青色)
で、脱色には塩酸アルコールが使われます。
フクシンに石炭酸を加えることで、強力に染色します。
まとめ:グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いは「細胞壁の構造の違い」
細菌はグラム染色により、グラム陽性菌とグラム陰性菌に分けられます。
ふたつの違いを表にまとめると
グラム陽性菌 | グラム陰性菌 | |
---|---|---|
グラム染色 | 紫色 | 赤色 |
細胞壁(ペプチドグリカン層) | 厚い | 薄い |
外膜 | なし | あり |
このようになります。
つまり、グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いは「細胞壁の構造の違い」ということです。
また、グラム染色でうまく染め出しできず、酸に抵抗性をもつ菌を抗酸菌といいます。
たとえば、結核菌やらい菌などのマイコバクテリウム属の菌がこれにあたります。
抗酸菌の細胞壁にはミコール酸というロウのような脂肪酸が含まれており、これがグラム染色の染料を弾くため、うまく染色できません。
一方、一般的な抗酸染色法で染色すると抗酸菌は赤色に染め出されます。
これは、細胞壁のミコール酸が脱色に使われる酸性アルコールに反応しないことを示しています。
抗酸菌は外膜がないことから、グラム陽性菌として扱われます。