細菌感染症の検査

細菌感染症の検査にはどのようなものがあるかをまとめました。

参考書籍

医学書院 標準微生物学 第14版

顕微鏡検査

顕微鏡検査は、検体を染色して顕微鏡で観察し、病原菌を推定する検査。

グラム染色

クリスタルバイオレット液で染色→ルゴール液で媒染→エタノールで脱色→サフラニン液で染色。

ペプチドグリカン層の厚い細菌は先に入れたクリスタルバイオレットが脱色されないため、最終的に紫色に染まる。これが陽性。

ペプチドグリカン層が薄く、外膜をもつ細菌は先のクリスタルバイオレットは簡単に脱色される。そのため、後に入れたサフラニンで赤く染まる。これが陰性。

つまり、「グラム陽性菌は紫色」「グラム陰性菌は赤色」に染まる。

「ペプチドグリカン層?外膜?何を言っているのかよくわからない」という人は、細胞壁の構造のおさらいを。

抗酸菌染色

グラム染色では染まりにくい細菌は、チール・ネルゼン染色という方法で染色する。グラム染色で染まりにくい細菌の例としては、結核菌や一部の放線菌などが挙げられる。これらを抗酸菌という。抗酸菌は、細胞壁にミコール酸をはじめとする脂質を多量にもっている。そのため、水溶性の染色液を使うグラム染色では色が入りにくいし、かろうじて入ったとしてもアルコールで脱色されない。

チール・ネルゼン染色では、石炭酸フクシン(赤色)で染色した後、塩酸アルコール(強酸!)で脱色し、最後にメチレンブルーで染色する。石炭酸フクシンは塩基性で、脂質を含んだ細胞壁でも染色しやすい。つまり、石炭酸が媒染しているということだ。

抗酸菌は、塩酸アルコールという強酸のものにすら脱色されないので(だから“抗酸”菌なのである)、陽性であれば最終的に赤く染まる。陰性であれば赤色が抜けた後に青色が入るため、青色に染まる。

超簡潔に書くと、チール・ネルゼン染色では「陽性は赤色」「陰性は青色」。グラム染色の逆、と覚えておくといいかも。グラム染色は紫か赤だけど。……余計ややこしい?

一般細菌検査

一般細菌検査は、患者から採取された喀出痰や尿、便、血液、髄液、膿、分泌液などの検体を培養し、原因菌の分類や同定をする検査。

菌が分類または同定されたら、薬剤感受性試験を行う。薬剤感受性試験は、適切な抗菌薬を選択するための試験である。よく用いられるのが「ディスク拡散法」「ミクロブイヨン希釈法」である。

抗酸菌検査

抗酸菌染色で陽性となった菌を分離培養し、菌種を同定し、薬剤感受性試験を実施する。

なお、抗酸菌のなかでも結核菌の取り扱いには注意が必要で、原則的にP3レベルの検査室でないと取り扱えないことになっている。

抗原検査

抗原検査は、細菌がもつ抗原の、菌種毎の特徴を利用した検査。

細菌の抗原とは、細胞表面に存在する免疫原性のある分子のこと。たとえば、細胞壁や莢膜、鞭毛などがこれにあたる。免疫原性とは、生体に免疫応答を引き起こさせる能力のことである。

抗原検査には「イムノクロマト法」や「ラテックス凝集反応を用いた検査法」などがある。

遺伝子検査

遺伝子検査は培養が難しい菌や毒素、薬剤耐性遺伝子などを検出する検査。培養に時間のかかる結核菌や非結核性抗酸菌の迅速診断も可能である。培養が難しい菌としては、淋菌やクラミジア、リケッチア、マイコプラズマなどが挙げられる。

遺伝子検査では核酸増幅法であるPCR法やLAMP法が用いられる。細菌のDNAやRNAを複製することで、培養せずとも、また、微量でも検出することができる。