【歯科衛生士の微生物学】細菌毒素の種類

細菌が産生する毒素の種類について、可及的にざっくりとまとめました。蓋を開ければもっと細かな種類がありますが、内容が複雑化して覚えづらくなるため(そもそも私が理解しきれないため)、省けるところは省いています。以下の内容だけでも十分でしょう……?!

ひとまず、細菌の毒素には「タンパク質毒素」「非タンパク質毒素」「リポ多糖(LPS)」の3種類があります。かつては「外毒素」「内毒素」という風に分けられていましたが、それぞれの詳細が判り、外毒素や内毒素という分け方は適切ではないとのことで、現在では上述の3種類に分けるそうです(私が学生時代に使っていた教科書には、何の疑いもなく外毒素・内毒素と書かれています)。

参考書籍

医学書院 標準微生物学 第14版

タンパク質毒素

細菌毒素のうちで最も多くを占める毒素。作用の違いによって、「リガンド型毒素」「膜傷害性毒素」「酵素毒素」に大別される。

リガンド型毒素

生体の生理機能を維持するための細胞受容体に結合し、その先の情報伝達系の活性化により毒性を発揮する毒素。

たとえば、大腸菌耐熱性毒素は腸管上皮細胞膜上の受容体に結合し、塩素イオンチャネルを活性化することにより、下痢を引き起こす。また、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは抗原提示細胞のMHCクラスⅡ分子とT細胞の受容体を結合させ、過剰な免疫応答を引き起こし、発熱や発疹などの症状を出現させる。

膜傷害性毒素

細胞膜の選択的透過性を破壊することによって細胞死などを引き起こす一群の毒素。

膜傷害性毒素の一部は細胞膜を貫通する孔を形成する。そのような毒素を孔形成毒素という。

酵素毒素

標的細胞の生体分子を基質にして酵素作用を発揮する毒素。

非タンパク質毒素

非タンパク質毒素には、

  • 気道上皮細胞を傷害する百日咳菌細胞壁由来のペプチドグリカンの断片(気道上皮細胞毒)
  • 卵管上皮細胞を傷害する淋菌細胞壁由来のペプチドグリカンの断片(名称無し)
  • 嘔吐型食中毒を引き起こすセレウス菌の嘔吐毒(セレウリド)

などがある。

リポ多糖(LPS)

リポ多糖(LPS)はグラム陰性菌外膜構成成分で、毒性をもつ。かつては「内毒素」と呼ばれていた。O抗原

リポ多糖により生体内で大量の炎症性サイトカインが産生されると、敗血症を起こす。敗血症の例としては、播種性血管内凝固症候群(DIC)多臓器不全(MOF)などが挙げられる。播種性血管内凝固症候群になると、血液を凝固させるために大量の血小板が消費されるため血小板数が減少し、出血もしやすいという事態になる。

敗血症で急激に血圧が低下した状態を“敗血症性ショック”というが、原因物質がリポ多糖である場合には「エンドトキシンショック」と呼ばれる。