真菌の増殖についてのまとめ。
真菌の増殖様式
大前提として、真菌には雄雌の区別がある。
無性生殖
「無性生殖」とは、雄雌の交配をせず、親細胞の有糸分裂により増殖すること。酵母の出芽・分裂による増殖や、菌糸がつくる胞子による増殖がこれにあたる。多くの真菌は無性生殖によって増殖する。無性生殖でつくられる菌糸の胞子は「無性胞子」という。
また、無性的に増殖した真菌の学名を「アナモルフ」という。真菌の名前は、無性的に増殖した場合のものと、有性的に増殖した場合のものの2つあるが、基本的にはアナモルフで呼ぶ。
有性生殖
「有性生殖」とは、雄雌の交配によって核融合し、減数分裂をして増殖すること。菌糸の胞子は有性的につくられることがあり、これを「有性胞子」という。
有性的に増殖した真菌の学名を「テレオモルフ」という。
真菌の胞子
菌糸形真菌は胞子をつくり、散布することで増殖する。上にも書いたように、胞子には「無性胞子」と「有性胞子」とがある。
無性胞子
無性胞子は、無性的につくられた胞子のこと。親細胞の有糸分裂による。
つくられ方によって下記の3つに分けられる。
- 胞子嚢胞子
- 分生子
- 厚膜胞子
胞子嚢胞子は、胞子嚢柄にできた胞子嚢のなかにつくられる胞子。成熟すると胞子嚢が破れ、胞子が放出される。接合菌門にみられる。
菌糸の先端から出芽・分化してつくられる胞子。成熟すると菌糸から分離する。子嚢菌門をはじめとする多くの菌にみられる。
分生子はさらに、下記のように細かく分けられる(一部のみ記載)。
- 出芽型分生子
- 分節型分生子
- アレウリオ型分生子
- フィアロ型分生子
芽細胞が菌糸の先端や側壁に生じて形成される分生子。カンジダ・アルビカンスにみられる。
菌糸が隔壁で区切られてできる分生子。コクシジオイデス・イミチスにみられる。
菌糸の先端や側壁に生じる、紡錘形の分生子。分生子と菌糸の先端・側壁を繋ぐ細胞が乾くことで分離する。フサリウム属の真菌にみられる。
特殊な形のフィアライド(分生子形成細胞)から生じる分生子。アスペルギルス属やフィアロフォラ属の真菌にみられる。
菌糸の先端や中間で細胞質が凝集し、厚い壁で包まれているもの。一種の耐久型であり、生殖の末の胞子ではないが、無性胞子のひとつとして考えられている。カンジダ・アルビカンスによくみられる。
有性胞子
有性胞子は雄雌の交配によってつくられる胞子。形成される過程から、下記の3つに分けられる。
- 接合胞子
- 子嚢胞子
- 担子胞子
菌糸同士の先端が接着・肥大してできる胞子。接合菌門の真菌がつくる。
子嚢内での核融合と減数分裂によりつくられる胞子。数は4個か8個。子嚢菌門の真菌がつくる。
子嚢は、菌糸の雌性配偶子が受精することにより形成される。
核融合と減数分裂により、担子器上につくられる胞子。数は4個。
担子器は菌糸の先端にある細胞で、突起がついている。この突起に胞子がつくられる。
まとめ
真菌には雄雌の区別がある。増殖は、交配をしない「無性生殖」と、交配・減数分裂による「有性生殖」で行われる。真菌は無性的にも有性的にも増殖できるが、多くの真菌は無性的に増殖する。
真菌の名前は、無性生殖をした場合の名前と、有性生殖をした場合の名前の2つがある。無性生殖をした真菌の学名を「アナモルフ」といい、有性生殖をした真菌の学名を「テレオモルフ」という。しかし、有性生殖を確認できていない真菌も多く、真菌の名前は基本的に、アナモルフで呼んでいる。
無性生殖でつくられる菌糸の胞子を「無性胞子」という。親細胞の有糸分裂により胞子がつくられる。無性胞子には「胞子嚢胞子」「分生子」「厚膜胞子」がある。
有性生殖でつくられる菌糸の胞子は「有性胞子」という。雄雌の交配があり、核融合と減数分裂により胞子がつくられる。有性胞子には「接合胞子」「子嚢胞子」「担子胞子」がある。