真菌を培養するときの条件や、増殖しやすい環境がどのようなものであるかをまとめた。真菌の基本情報として、生化学的な特徴や栄養源についても記載している。
真菌の生化学的な特徴
真菌は、有機物を栄養素として利用する従属栄養生物。
大部分の真菌は好気性。アルコール発酵する酵母やパン作りに利用される酵母は通性(酸素があってもなくてもいい)だが、酸素のある方が発育しやすい。
真菌の栄養源
真菌のエネルギー源は植物由来の糖類(グルコース・スクロース・マンノースなど)。窒素源はアンモニアや硝酸塩。
皮膚に感染する真菌は、皮膚や毛髪のケラチン(タンパク質)を分解して利用する。
真菌の発育しやすい環境
発育温度は20~35℃と、細菌より低い。
培養するときは有酸素下で、培地には炭素源としてグルコースを、微量栄養素としてビオチンやチアミンを加えて培養する(多くのビタミン類は真菌自身によって合成される)。比較的簡単な培地でもよく育つ。
臨床検査で使用される培地には、サブロー寒天培地・ポテトデキストロース寒天培地・コーンミール寒天培地などがある。
真菌の抵抗力
真菌は細菌と同様に、50~60℃・10分間の加熱で死滅する。胞子の抵抗力は菌糸のそれよりやや強いが、65℃・1時間程度加熱すれば死滅する。
消毒薬への抵抗力も細菌と同程度。
抗生物質は真菌には効かないため、真菌症の治療には抗真菌薬が必要。
まとめ
真菌のエネルギー源は植物由来の糖類(グルコース・スクロース・マンノースなど)で、窒素源はアンモニアや硝酸塩。皮膚感染真菌は、皮膚や毛髪のケラチン(タンパク質)を分解して利用する。
真菌はグルコースやビオチン、チアミンなどを加えた簡単な培地でよく発育する。ビタミン類は自家合成。
大部分の真菌は好気性。通気性の真菌(アルコール発酵やパン作り用の酵母)もあるが、酸素のある方が発育しやすい。発育温度は20~35℃。確かにパンを作るとき、発酵するときの温度は約30℃で指定される。
真菌は50~60℃・10分間の加熱で死滅する。菌糸より抵抗力の強い胞子でも、65℃で1時間程加熱すれば死滅する。
真菌には抗生物質は効かないため、抗真菌薬の投与が必要。
真菌と比べられることの多い、細菌の発育・増殖条件については下記の記事を参照。
【微生物学】細菌の発育・増殖条件