【歯科衛生士の微生物学】病原体の付着・侵入から発症まで

病原体が生体に付着・侵入してから発症し、その後どのような経過を取るのかについてまとめました。

参考文献

医学書院 系統看護学講座 専門基礎分野 疾病のなりたちと回復の促進④ 微生物学 第11版第6刷

病原体の付着・侵入

病原体は主に皮膚や粘膜から侵入します。そして、特定の臓器や細胞に付着し、増殖します。逆を言えば、ある病原体が増殖できない臓器や細胞には付着しないということです。たとえば、多くのレンサ球菌は皮膚に擦り込むと化膿を起こしますが、経口摂取しても通常は発症しません。

一方で、「異所性感染」というものも存在します。通常なら感染しないようなところで感染することを言います。たとえば、口腔内常在菌であるレンサ球菌の一部は、抜歯をきっかけに血中に入り、心内膜炎を起こすことがあります。腸内常在菌である大腸菌が尿道から侵入して尿路感染症を起こすこともあります。

潜伏期

潜伏期とは、病原体が侵入・付着してから発症するまでの期間のことを言います。

発症

発症とは、病原体の感染が成立し、生体に何らかの異常が生じた状態のことです。

症状の現れ方

感染成立後、症状には2通りの現れ方があります。

明確な症状が現れる:顕性感染

明確な症状が現れる感染を「顕性感染」と言います。

症状が現れない:不顕性感染

検査で感染が確認されているにも関わらず、症状が現れない感染を「不顕性感染」と言います。

発症後の経過

病原体に感染して発症した後は、以下のような経過をとります。

自然治癒

自然治癒とは、医療的な介入をなくして生体の免疫応答のみで病原体の排除・毒素の中和がされ、症状が消失することを言います。

再燃

再燃とは、免疫で排除しきれずに潜んでいた病原体が、再び増殖して症状を引き起こすことです。

無症候性キャリア

無症候性キャリアとは、症状が消失してもなお病原体を排出し続ける宿主のことを言います。無症状でも感染源になり得ます。

急性・慢性感染症

感染症は、症状の進み方で2種類に分けられます。

急性感染症

急性感染症とは、発症後の経過が一過性で、急性に(週単位で)進行する感染症のこと。

慢性感染症

慢性感染症とは、発症後の経過が慢性に(月または年単位で)進行する感染症のこと。

持続感染

ウイルスに感染した場合、ウイルスが生体内から排除されず、存在し続けることがあります。これを「持続感染」と言います。

持続感染には「潜伏感染」と「遅発性感染」があります。

潜伏感染

潜伏感染とは、ウイルスに感染した場合で、ウイルスが増殖せずに潜伏している状態のこと。

潜伏しているウイルスが何かのきっかけで増殖を始め、症状を引き起こすことがあります。これを「回帰発症」と言います。内因感染のひとつです。

遅発性感染

遅発性感染とは、ウイルス感染後、数ヶ月から数十年の単位で潜伏し、徐々に発症・進行していく感染のこと。最終的に死に至らしめる場合もあります。

まとめ

病原体に感染し、発症した後はさまざまな経過を取り得ます。病原体を自然に排除することもあれば、体内に居座らせ続けることもあります。症状の現れ方も急速だったりゆっくりだったり、感染してから長期間を経て突然症状が現れたりします。