【歯科衛生士の微生物学】原虫の特徴・種類と構造

原虫はどんな微生物なのか?特徴と種類、それぞれの構造についてまとめます。

参考書籍

系統看護学講座 専門基礎分野 疾病のなりたちと回復の促進④ 微生物学 第11版第6刷
医学書院 標準微生物学 第14版

原虫の基本的な特徴と構造

原虫は真菌と同じ真核生物単細胞だが、動物的な特徴をもっている。

生物学でいう「原生動物」を、微生物学では「原虫」として扱います。

細胞小器官が発達しているが、細菌や真菌がもつ細胞壁はない。その代わり、細胞膜の外側に細胞外皮をもつ。また、細胞質は外質内質に分かれており、外質で運動や食物摂取、排泄などを行っている。

原虫の増殖は、無性生殖有性生殖により起こる。無性生殖には二分裂多数分裂がある。

また、分裂・増殖や代謝、運動など行っている状態を「栄養型」といい、環境の変化から身を守るために抵抗力をつけた状態を「嚢子(シスト)」という。嚢子は感染性をもつ

原虫の種類と特徴

原虫には下記の種類がある。

  • 根足虫類
  • 鞭毛虫類
  • 胞子虫類
  • 繊毛虫類

それぞれの種類の特徴を以下にまとめる。

根足虫類

偽足を出してアメーバ運動をする原虫。例は、赤痢アメーバ。

根足虫類はさらに下記のように分けられる。

  • 病原性アメーバ
  • 非病原性アメーバ
  • 病原性自由生活アメーバ

鞭毛虫類

鞭毛波動膜で運動する原虫。キネトプラスト(ミトコンドリアDNAが凝集したもの)をもつ。例は、ランブル鞭毛虫や膣トリコモナス。

膣トリコモナスに嚢子はない!

鞭毛虫類はさらに下記のように分類される。

  • 血液・組織寄生性鞭毛虫
  • 消化器・泌尿生殖器寄生性鞭毛虫

胞子虫類

胞子虫類は、宿主細胞への接触・侵入のために頂端複合構造アピカルコンプレックス)をもつ原虫。例は、マラリア原虫やトキソプラズマ、クリプトスポリジウム。

繊毛虫類

繊毛虫類は、繊毛で運動する原虫。例は、大腸バランチジウム。

まとめ

原虫は単細胞の真核生物。細胞壁がない代わりに、細胞外皮がある。細胞質は外質と内質に分かれており、外質で食物摂取や排泄、運動を行っている。

原虫は有性生殖と無性生殖(二分裂 or 多数分裂)で増殖する。生命活動を行う状態を「栄養型」といい、環境の変化に対する抵抗力をつけた状態を「嚢子(シスト)」という。嚢子も感染性をもつ。

原虫には「根足虫類」「鞭毛虫類」「胞子虫類」「繊毛虫類」がある。根足虫類は偽足で運動する。鞭毛虫類は鞭毛や波動膜で運動する。また、キネトプラストをもつのが特徴。胞子虫類は宿主細胞に侵入するために、アピカルコンプレックス(頂端複合構造)をもつ。繊毛虫は繊毛で運動する。

鞭毛虫類である膣トリコモナスには嚢子がない。