ウイルスの増殖過程
ウイルスは、「吸着→侵入→脱殻→ウイルス核酸の複製→ウイルス粒子の組み立て→放出」という流れで増殖する。
吸着
宿主細胞表面にある受容体に吸着する。
※この受容体はウイルスのためのものではない。
侵入
エンベロープをもたないウイルスともつウイルスとでは、侵入の仕方が少々異なる。
宿主細胞のエンドサイトーシス(飲食作用)によって細胞内に取り込まれる。
宿主細胞の細胞膜との融合により細胞内に取り込まれる。
エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた後、小胞膜と融合する場合もある。
脱殻
宿主細胞内に取り込まれた後、カプシド(タンパク質の殻)から核酸が外に出る「脱殻」が起こる。
ウイルス核酸の複製
脱殻後、核酸が複製される。複製された核酸からタンパク質がつくられる。
ウイルス粒子の組み立て
核酸の複製によりつくられたタンパク質が集合し、ウイルス粒子を組み立てる。
放出
ウイルスによっては、宿主細胞の細胞膜をエンベロープとして被って細胞外に放出される。
ウイルスの増殖曲線
ウイルスが宿主細胞内に侵入し、脱殻が起こり、複製されたウイルス粒子が細胞外に放出されるまでの間を「エクリプス(暗黒期)」と呼ぶ。この期間は数時間~十数時間で、ウイルスが検出されない。
ウイルスに感染した細胞はどうなるか
培養細胞にウイルスを感染させると、通常、細胞は変性し、死滅する。この変化を「細胞変性効果」という。
ウイルスが腫瘍ウイルスである場合、細胞変性効果は起こらず、逆に細胞の異常増殖を引き起こす。この現象を「細胞の不死化」または「トランスフォーメーション」という。
まとめ
ウイルスは「吸着→侵入→脱殻→核酸の複製→ウイルス粒子の組み立て→放出」という過程で増殖する。
宿主細胞内に侵入し、ウイルス粒子を複製して細胞外に放たれるまでの間は「エクリプス(暗黒期)」と呼ばれ、ウイルスは検出されない。
ウイルスに感染した細胞は、通常は変性して死ぬ。腫瘍ウイルス感染の場合は、細胞は異常に増殖する。