【歯科衛生士の微生物学】ウイルスの分類

ウイルスの分類と、ウイルス様病原因子についてまとめました。

参考文献

系統看護学講座 専門基礎分野 疾病のなりたちと回復の促進④ 微生物学 第11版第6刷

ウイルス学的分類

ウイルス学では、物理化学的性状でウイルスを分類します。

「ウイルスの物理化学的性状」とは、下記のようなものが挙げられます。

  • 核酸の種類(DNA・RNA)
  • 核酸の構造・分子量
  • ウイルス粒子の大きさ・形状
  • カプシドの対称性の種類
  • カプソメアの数
  • エンベロープの有無

まずは核酸の種類で大別されます。

ウイルスの構造についてはこちら

ウイルスの臨床的分類

ウイルスは、感染経路や臓器親和性、病原性・疾患などでも分類されます。

アルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)

カやダニなどの節足動物の体内で増殖し、吸血によってヒトの体内に侵入するウイルス。

例:日本脳炎ウイルス、デングウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス

血液媒介性ウイルス

血液を介して伝播するウイルス。

例:B型・C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1

呼吸器親和性ウイルス

経気道的に感染し、呼吸器で増殖するウイルス。

例:インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス

腸管親和性ウイルス

経口的に感染し、消化器で増殖するウイルス。

例:ノロウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス

肝炎ウイルス

肝細胞に感染し、増殖するウイルス。

例:A型・B型・C型・D型・E型肝炎ウイルス

腫瘍ウイルス

細胞にトランスフォーメーション(不死化)を起こすウイルス。

例:ヒトパピローマウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1

特殊なウイルスと病原因子

特殊なウイルスとして「欠損ウイルス」、ウイルス様病原因子として「ウイロイド」「プリオン」があります。

欠損ウイルス

ウイルスゲノムに欠損があり、単独では複製できないウイルス。複製にはヘルパーウイルスが必要です。

たとえば、D型肝炎ウイルスが欠損ウイルスにあたります。複製するにはB型肝炎ウイルスとの重複感染が必要です。複製されたD型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスのエンベロープを被っています。

ウイロイド

小さなRNA分子からなり、植物に感染症を起こす病原因子。

プリオン

明確な形態がなく、核酸をもたず、タンパク質のみからなる病原因子。消毒薬に異常な抵抗性を示します。感染すると、遅発性で致命的な症状を起こします。

例:クロイツフェルトヤコブ病、ウシ海綿状脳症(BSE)

まとめ

ウイルスは、ウイルス学的や臨床的に分類されます。また、ウイルス様病原因子も存在します。